「自省録」から学ぶ 現代を生き抜くためのマルクス・アウレリウス・アントニヌスの哲学

哲学・倫理学

マルクス・アウレリウス・アントニヌスが著した『自省録』をご存じでしょうか。

この著書は、2000年近く前の著作でありながら、現代を生きる私たちに多くの示唆を与えてくれます。

ストア哲学の集大成ともいえるこの書物は、ローマ皇帝としての重責を担いながらも、内省を深め、

精神的な平穏を追求した彼の思想が凝縮されています。

その著作の内容を紹介いたします。

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逆境の中での心の持ち方

私たちは日々、様々な困難や逆境に直面します。

思い通りにいかないこと、予期せぬこと、そして人間関係の中でのいざこざなど、ストレスは尽きません。

しかし、マルクス・アウレリウスは、そうした外的な出来事そのものが私たちを苦しめるのではないと説いています。

『自省録』には、私たちを悩ませるのは物事そのものではなく、物事に対する私たちの見方であるという言葉があります。

これは、同じ出来事でも、それをどう捉えるかで私たちの感情が大きく変わるという真理を示しています。

例えば、雨が降っても、

「予定が台無しになった」と落ち込む人もいれば、「恵みの雨だ」と喜ぶ人もいるでしょう。

どんなに頑張っても、雨という天候をコントロールできません。

しかし、自分の感情をコントロールすることはできます。

この言葉は、コントロールできない外部の状況に心を乱されるのではなく、

コントロールできることすなわち自分自身の思考や感情の解釈に集中することの重要性を教えてくれます。。

たとえ、どんなに苦しい状況に陥ったとしても、冷静に舵を取るように、内なる視点を変えることで、

いかなる逆境も乗り越える力が生まれると説いています。

他者と比較してしまう自分

マルクス・アウレリウスは、ローマ皇帝という絶大な権力を持つ立場にありながらも、

自身の弱さや葛藤を率直に書き残しています。

彼の内省は、時代を超えて普遍的な人間の本質を浮き彫りにします。

私たちは皆、

時に感情に流され、SNSの「いいね」の数に一喜一憂したり

他者との比較で苦しんだり、

自身の役割に疑問を抱いたりすることがあります

彼は、そうした人間の普遍的な側面を深く洞察し、

「善き人間であるために、他者を批判する必要はない」と述べています。

これは、まるで隣の芝生が青く見えることに囚われるのではなく、

自分の庭を丁寧に手入れすることに集中するようなものです。

他者の評価や行動に左右されるのではなく、

自分自身の内面を深く見つめ、常に向上しようと努める姿勢こそが、

真の心の豊かさにつながると彼は教えてくれます。

自己と向き合い、内なる声に耳を傾けることで、私たちは真の自己を発見し、偽りのない生き方を見つけることができるのです。

死生観と時間の有限性

「人生は短い」という言葉は、『自省録』の中で繰り返し登場するテーマの一つです。

そこで、彼の死生観と時間の有限性について紹介します。

誰かが死んだとき

私たちは、「死ぬのが怖い」「誰かが死んだら悲しい」というような形で「死」捉えています。

しかし、ストア派哲学では、そうは考えません。

つまり、「死んだあとは何も感じない。だから死とは苦しいものではない」と捉えています。

ただ、私たちは誰かが死んだら悲しいし、その苦しみは耐え難いものだ感じることが多くあります。

そこでマルクス・アウレリウスの言葉が役に立ちます。

簡単に意訳すると以下のような形になります。

「死というものは確かに悲しい」。

しかし、「悲しいことは苦しいことと同意ではなありません」

「死の悲しみは、過去に生きたたくさんの人が経験し、彼らは乗り越えることができた、だから私たちは今存在する。」

「過去の多くの人たちが乗り越えることができたものが、どうしてあなた方に乗り越えられないでしょうか。」

「大丈夫。必ず乗り越えることができる」

マルクス・アウレリウスは以上のように、死に対したときの勇気を与えてくれます。

時間の有限性

死は怖いものだから、考えないようにする。そのように考える人も多いと思います。

しかし、マルクス・アウレリウスの考え方は異なります。

むしろ、私たちはいつか訪れる死を意識することで、今この瞬間の大切さを再認識できます。

マルクス・アウレリウスは、人生の有限性を受け入れ、今日という一日を最大限に生きることの価値を強調しています。

まるで、残り時間の少ない砂時計を見つめながら、一粒一粒の砂を大切にするように、

私たちは与えられた時間を無駄にすることなく、今できることに全力を尽くすべきだと説きます。

明日や未来のために今日を犠牲にするのではなく、目の前の瞬間を大切にし、悔いのない人生を送ること。

これは、現代社会において、膨大な情報や選択肢に囲まれる中で、本当に大切なものを見極め、時間管理や生き方を考える上で非常に重要な視点となります。

死を意識することで、私たちは真に生きることの意味を深く考えることができるのです

倫理的な生き方と他者への奉仕

ストア哲学の核となる教えの一つに、徳に基づいた生き方があります。

マルクス・アウレリウスは、個人の幸福だけでなく、人類全体への貢献を重視しました。

彼は、「理性的な存在として、相互に協力し、助け合うことが私たちの本質である」と述べています。

これは、社会の中で一人ひとりがそれぞれの役割を認識し、互いに支え合うことの重要性を示しています。

現代社会において、個人主義が蔓延する中で、他者との共生や社会貢献の意識がいかに重要であるかを教えてくれます。

私たちは、自分自身の利益だけでなく、より大きな共同体の一員として、他者への奉仕の精神を持つことの大切さを再認識できます。

『自省録』は、私たち自身の内面に深く向き合い、困難な状況の中でも心の平静を保ち、より良い人生を送るための羅針盤となるでしょう。

ぜひ一度、この古き良き書物を手に取ってみてはいかがでしょうか。

・『自省録』(マルクス・アウレリウス・アントニヌス)

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