こんにちは。
心理・哲学倫理・歴史をメインに書いています、よっとんです。
本日は、飲茶さんが書いた『正義の教室 善く生きるための哲学入門』についてです。
結論からいえば、哲学を勉強したい人には超超超おすすめです!!
※以下、『正義の教室』で統一いたします。
なぜ、おすすめなのか、その点を簡単に記していきたいと思います!
※ おすすめポイント⑤、⑥は本の内容を含みますので、ネタバレをしたくない方は読み飛ばして構いません!
おすすめポイント①場面設定が秀逸で、頭に残りやすい!
『正義の教室』は設定が多くの哲学の解説書とは異なっています!!
基本的に多くの哲学の解説書は、
「○○という哲学者がいました。彼は△△という考えをもっていました」
という感じで、哲学者の生涯や思想を淡々と解説するものです。
しかし、飲茶著の『正義の教室』はもう場面設定から秀逸です。
なんと、場面設定は「学校」です!!とても身近な例ですね!!
難解な哲学を伝えるのに、身近な場面設定に置くことで、とてもわかりやすくなっています。
さらに、この本は、学校内の詳細な設定もしっかりしています。
簡潔にいえば、以下の通りになります。
偶然、選択授業で倫理を取った生徒たち(正義(まさよし)・千幸・ミユウ・倫理の4名、彼らは全員生徒会委員です)に風祭先生が倫理(哲学)を教えていく。そして、それをもとに生徒会の4名が、授業内容を振り返ったり、とある理由で学校に設置されてしまった「監視カメラ」ロボットの是非を議論していく。
さらに、登場人物も特徴的で、
正義君以外の女子3名の生徒(千幸・ミユウ・倫理)が
それぞれ、功利主義・自由主義・直観主義(※3つについては後程説明します)の考えを持っており、
この点がこの本を面白くするところになっています!!
おすすめポイント②圧倒的なわかりやすさ!!
著者の飲茶さんは東北大学の大学院の出身で
難解な哲学を分かりやすく書いている本をたくさん出していることで有名です!
※『正義の教室』以外の本はこの記事の一番下にリンクを張りましたので、参照ください。
『正義の教室』では、
まず、風祭先生による授業内容が大変分かりやすいのです。
例えば、リバタリアニズムとリベラリズム。
日本語ではどちらも「自由主義」と訳をあてられるので、混乱してしまいますが、
風祭先生は、「リバタリアニズム」を「強い自由主義」(自由を奪う=悪)
「リベラリズム」を「弱い自由主義」(「弱者の」自由を奪う=悪)
と置き換えられるなど、とても分かりやすい表現に変えられて説明されます。
ただ、この本はそれだけではありません。
物語にでてくる高校生たちが難解な哲学を分かりやすい表現に変えてくれています!!
例えば、功利主義の説明をする際、風祭先生は功利だとわかりにくいので、
「幸福の量」と言い換えましたが、、、
生徒の千幸は、「ハッピーポイント」と表現し直してくれます。
「功利主義はみんなの「ハッピーポイント」の総量を高くする考え方」と説明されると、
ただ、功利主義とは、(wikipediaより)
「行為や制度の社会的な望ましさは、その結果として生じる効用によって決定されるとする考え方」
といわれるより分かりやすいですね!!
有難い!!(笑)
哲学の解説書をたくさん読んできましたが、
飲茶さんの書物はその中でも圧倒的な分かりやすさを誇っていますので、
哲学初心者だけでなく、倫理を受験科目とする高校生にもおすすめできるものとなっています!
おすすめポイント③哲学書なのに物語調!!すらすら読めちゃう!
『正義の教室』は最初から最後まで生徒会長の正義を主人公とした物語になっています!
基本的には、
倫理の授業 ⇒ 生徒会での議論 ⇒ 倫理の授業 ⇒ 生徒会の議論 ⇒ 倫理の授業 …
という形で物語が進んでいきます。
授業部分は倫理を風祭先生が教えていくのですが、ここも淡々と進むことは決してありません!
風祭先生の具体的な質問に生徒が答え、その答えをもとに授業を展開していくのですが、
各生徒会の女子生徒3名は、それぞれ自分の中に「主義」がありますので、
授業内でも話し合いが過熱化、、、白熱したものになっていきます。
ここがかなりいい味を出しています!
3名の生徒の話し合いが、知らず知らずに哲学の内容を深堀りしてくれるからです。
それから、授業後の各章では、必ず生徒会の生徒たちだけでの授業のまとめと、
各授業で出てきた正義の考え方に対するメリット、デメリットを話し合います。
この場面は高校生だけの話なので、授業内容がさらに具体的・簡易にまとめてくれます!
『正義の教室』、哲学書なのに物語調で、かつ各章の生徒のまとめがしっかりしているので、
一読するだけでも、大部分覚えることができます!!
おすすめポイント④具体的な問題が満載!読者も参加している気分に!
3つ目は、読者も考えさせられる質問内容が満載なことにあります。
例えば、物語冒頭にでてくる問題を簡潔にまとめました ↓
ある父親の休日での出来事、とある幼稚園で火事がおきた。その中には自分の娘を含む多くの園児がいた。消防士であった父親は、火災現場に飛び込む。普段の迎えの時は入口から右に曲がる。何故なら大広場があり、多くの園児が迎えを待っているからだ。しかし、この時は違った。自分の娘が発熱したため、左手の救護室にいるという。非番の当日はろくな装備もしていないので、両方へ行くことは不可能だ。さて、父親は右に曲がり、多くの園児を助けるべきか、あるいは左に曲がり、自分の娘を助けるべきか。
どうでしょうか?
とても面白い問題ですよね??
同じ場面でなかったとしても、似たような場面に遭遇することはあるかもしれません。。
実際に僕自身も考えてしまいました。「もしかしたら、娘を助けちゃうかもしれない・・・」と。
このように、具体的で考えさせられる質問が、
『正義の教室』には他にもたくさん出てきます(授業内で風祭先生が出すことが多いです)。
だから、読みながらも、参加者になっているような気分を味わうことができるのです。
「私だったらどうするだろう・・・?」と考える楽しさを実感できます。
ただ、皆さんの中には、「こんな質問には答えがないだろ!!」
と思われる方がいるかもしれません。
しかし、そういった方も、質問に対する各生徒の反応を読むことで、
「今まで、私はこんな考え方していたんだ」と自分の思考パターンが分かり、
かつ、
「こういう答えをする人もいるんだ」というのを様々な考え方を学べるので、
多角的な思考ができるようになると思います!
質問の質が高いだけではなく、この質問に対してどういう解答が考えられるかというところまで
しっかりと記載されていますので、
自分の思考の幅を増やすためにも、この書は有効かと思います!!
おすすめポイント⑤明日から使える「正義論」!
ここからは、実際に中身のお話に踏み込んでいきます。
※本の内容すべてを紹介するわけではありませんが、少しでもネタバレ無しで『正義の教室』を読みたいとお思いの方は読み飛ばすことをおすすめします。
『正義の教室』の内容は明日からでも使えるものとなっております
なぜなら、私たちは、必ず「○○は正しい」と判断して、行動をするからです!
例えば、ケーキを探す場面を想像しましょう。
あなたは数あるケーキの中から、チーズケーキを選んだとします。
次にその理由を考えてみましょう。
そのとき、必ず「○○は正しい」という結論に至ります。
この場合「チーズケーキを選ぶことは正しい」と判断した、ということになります。
「えっ??、私はチーズケーキが好きだから、チーズケーキを選んだけど・・・」とという方もいると思います。
ただ、その場合も、「チーズケーキを「好き」と言う直感で選ぶことを正しい」と判断して、
チーズケーキを選ぶことになりますので、
やはり、「○○は正しい」という考えは私たちの日常につきまとうものでしょう。
『正義の教室』で展開される正義は大きく3つに分けて正義について考えを深めることになります。
- 平等の正義(功利主義)
- 自由の正義(自由主義)
- 宗教の正義(直観主義)
1平等の正義(功利主義)とは
「最大多数の最大幸福」を目指すものです。
全体として幸福の量が高くなる選択をすることが正義!ということなります。
実は、すでに平等の正義(功利主義)を実践している例があります。
医療現場で採用されている「トリアージ」です。
救急医療のドラマを見たことがある人は分かりますでしょうか?
大きな事故が起こったときに、傷害の程度に応じて治療の優先度を変えるというものです。
多数を救うため、軽症の人はもちろんのこと、
9割の確率で助からないほどのけがを負った人は後回しにされることもあります。
その選択をすることで、多数を助ける・・・これがトリアージです。
功利主義的な考え方ですね!!
2.自由の正義(自由主義)はその名の通り、「自由こそ正義」というものです。
逆に言えば、不自由は悪、ということなります。
例えば、累進課税制度(所得の多くなるほど、税を多くとるシステム)は悪ですよね。
金持ちが金持ちになる自由を奪っていることになりますから。
その他、自殺する自由は?無知な人の自由は?など、
『正義の教室』では解説されていますので、事細かく解説されています。
ぜひ気になる方は読んでみてください。
最後、3.宗教の正義(直観主義)です。
理屈を超えた正しさがあるという立場になります。
「なんとなく・・・」という感覚に近いかもしれません。
例えば、「人殺しは悪いか、理由とともに答えてください。」
と聞かれたときに、皆さんの中には、
「人殺しは悪いに決まっている!理由なんてない!悪いものは悪い!」
という考えの方がいると思います。
その絶対主義的な考えをお持ちの方は、直観主義になります。
「宗教の正義」という言い方をしている理由は、
「理屈を超えた正義で、物理法則では証明できないものだから」ということになります。
以上大枠の3つの簡単なご紹介でしたが、
この3つの正義に対する考え方で、大体の政治課題を考えることができるようになります。
例えば、福祉の問題。
今までは、「福祉は善いこと!」と単純に考えていたかもしれませんが、
自由主義からすれば、福祉の考えはNGとなります。
なぜなら、そもそも福祉は税金から成り立つものであり、
私たちから税金を払わない自由を奪っているからです。
いやいや、それは違うでしょ?と思うかもしれません。
そういう方は、
町中に監視カメラを設置し、人間を点数化することについてはどうでしょう。
善いことをしたらプラス、罪を犯したらマイナス、点数が高いと就職に有利、税で優遇など
という制度にしたら、すごく善い世の中になると思いませんか???・・・
いかがでしょう。
『正義の教室』を読めば、上の問題に対する答え方、あるいは理由のつけ方が分かるようになると思います。
「「点数化」するというのは○○という考え方だな・・・俺は△△という考え方を持っているから、この考えには反対だな」というようにです!
繰り返しになりますが、『正義の教室』で正義について考えることで、
物事に対する考え方が豊かになります。
まさに、「明日から使える正義論の書」、それが、『正義の教室』です!
おすすめポイント⑥西洋哲学の全体像が簡単に把握できる
最後は、西洋哲学の全体像が簡単には把握できるというものです。
ここは詳細を話すとネタバレになってしまうので、
簡単なご紹介にとどめさせていただきます。
宗教の正義の授業にて、西洋哲学の概観の授業があります。
ソクラテスから、プラトン、デカルト、キルケゴール、ニーチェなど
有名な哲学者の考えが、テンポよくとても分かりやすく紹介されます。
これだけでも西洋哲学初心者にはとても有難いものなのですが、
最後が衝撃でした!!
実は、西洋哲学は大きく分けると二つのグループに分けられる
というものです!
言ってしまうと、ネタバレになるので、ここでは控えますが、
その二つの対立的構図を知っておくと、
哲学書が大変読みやすくなると思います!!
実際私はそうでした。
「この哲学者はこちらのグループの主張だから・・・」
と知っていて、哲学者にあたるのとそうではないのとでは雲泥の差だと思います!
ぜひ読んで、西洋哲学の全体像を学んでいただければと思います!!
まとめ
『正義の教室』(飲茶)の紹介はいかがだったでしょうか?
特に、「おすすめポイント⑤明日から使える正義論」に関しては
皆さんの日常に役立つものだと思いますので、ぜひ参考ください。
飲茶さんはその他にもたくさんの哲学解説書を出していますので、参照くださいませ。
長くなりましたが、読んでくださり誠にありがとうございました!!
以下、おすすめの本になります。
- 『史上最強の哲学入門』 (飲茶)
- 『哲学的な何か、あと科学とか』(飲茶)
- 『14歳からの哲学入門 「今」を生きるためのテキスト』(飲茶)
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