近代日本の文学界の系譜(分かりやすくまとめた!)

哲学・倫理学

こんにちは。よっとんです。

歴史・倫理哲学・心理学、それから本紹介のブログを書いています

今日は「近代日本の文学界の系譜(わかりやすくまとめた!)」です。

近代の日本文学界はとてもグループが多く、学びにくい分野でもあります。

それを今回はわかるやすくするために、なんと大きく2つのグループに分けてみました!

その2つとは、①現実的なものを書く写実主義系統、②理想的なものを描く非写実主義、です!

この2つに分けると今までとっつきにくかった文学がすっと頭に入ると思いますので、おすすめです!

この記事を読めば以下のことが分かります。

 近代日本の文学界の流れ

② 近代日本文学界の概略

近代日本の文学界の系譜について、分かりやすく簡潔に書くことを目指しましたので、ぜひ最後までご覧ください!

写実主義と非写実主義

まず近代文学は写実主義と非写実主義に分ければ分かりやすくなります。

写実主義は次のような意味です。

写実主義現実をありのままに写し出す考え方

なぜ、近代以降は写実主義の小説を目指すことになったのか?

それは、江戸時代から描かれた戯作文学と、政治小説というものが関わっています

戯作文学は娯楽を主とした江戸後期の通俗小説です。

特に勧善懲悪が主でした。

だから、必ず悪者は倒されました。

しかし、リアルの世界には悪者がたくさんいますし、誰でも悪い感情を持ち合わせます。

写実主義は、その人間リアルをありのままに映し出そうと生まれました。

もう一つの政治小説は政治的な宣伝のための小説や、政治思想の啓蒙や普及等を目的とした小説です。

近代以降の自由民権運動時に時代小説はよく描かれました。

ただ、書いていいのはあくまでも政治思想の普及のためのものです。

しかし、近代以降、西欧の考え方、特に自然主義的な思想(※簡単に言えば、自然をありのままに描こうという思想)が日本に流入したこともあり、

日本では様々な思想をリアルに描き出そうと考える者が現れました。

先ほどと被りますが、リアルさを追求するのが写実主義です。

写実主義は政治小説への反発という側面も有して登場したのでした。

具体的に、写実主義の始まりは坪内逍遥の『小説神髄』からになります。

その後、写実主義的な系統の文学として、自然主義、反自然主義、白樺派、プロレタリア文学などが登場します。

写実主義の始まり

① 坪内逍遥…『小説神髄』:「小説は写実的であるべき」という小説の指南書

② 二葉亭四迷…『浮雲』:言文一致体(話し言葉と書き言葉を一致させる形態)の初小説


一方、現実的な物ばかりではなくもっとフィクションや憧れを書いてもいいのではないか、

あるいは、もっと感情的なものを貫いてもいいのではないか、という人たちも登場します

非写実的なグループです。あるいは、より内面を重視した写実主義です。

のちほど出てくる、ロマン主義、耽美派などがこちらに属します。

※今回は分かりやすくするために「非写実主義」という言葉を使用します。

あのイケメン、あの美女と、あんなことやこんなことを、といったものや、

あるいは官能的な美の追求を小説に組み込んでいきました。

では、次の項から一つずつ説明していきます。

自然主義とロマン主義

坪内逍遥の『小説神髄』の発表の10年後(明治30年あたり)に日本でも自然主義文学が登場しました。

自然主義文学は、もともとは西欧の自然主義がもとにあります。

自然主義は、人間社会をありのままに表現することを重視するグループです。

似たような言葉を先ほどの項でも聞きましたね。

そうです。写実主義と同じです。

だから、自然主義は写実主義の系統に属しています。

有名な人物と作品を載せておきます。

自然主義…人間社会の現実をありのままに表現することを重視。※哲学のそれとは別の意味

① 国木田独歩:『武蔵野』:「小説は写実的であるべき」という小説の指南書

② 島崎藤村 :『破戒

③ 田山花袋 :『蒲団』※私小説の最初といわれる。

特に、田山花袋の『蒲団』は当時の日本国民に衝撃を与えました。

『蒲団』という話は、とある妻子持ちの小説家(男性)のもとに小説家志望の女性が住み込むところから始まります。

男性は女性を意識するのですが、女性は他の男性と恋をしました。

結果的に、その女性は出ていくことになります。

最後のシーンが衝撃なのですが、その男性は女性が寝ていたふとん(蒲団)でむせび泣くのです。

この最後のシーンに当時の日本人は衝撃を受けました。

こういうプライベートな小説を私小説といいます。

私はこういうことをしているわけではありませんが、確かに人間のリアルさを描いていますね。

これが自然主義文学の特徴です。

ただ、自然主義は人間の奥底にひそむ感情をありのままに描いたので、

少し気持ち悪かったり、暗かったりしました。この部分がのちに反自然主義を生むきっかけとなります。

さて、話は変わりますが、自然主義の誕生の少し前に北村透谷という人物が『文学界』という雑誌を発刊しました。

この『文学界』はロマン主義の始まりとなりました。

ロマン主義人間の感情を強調する。個性の尊重や封建道徳からの解放を主張する

北村透谷の『文学界』から始まる。

① 樋口一葉…『たけくらべ』『にごりえ』

② 泉鏡花 …『高野聖

③ 森鷗外 …『舞姫

ロマン主義文学では、人間の感情を強調しました。

封建道徳からの解放とは、簡単に言えば従来の身分制や上下関係からの解放のことです。

当時はまだまだ社会的な制約の強い時代でした。

そんな縛られた社会で個人の感情を、特に恋模様を描いた物が多いのがロマン主義の特徴ともいえます

森鴎外の『舞姫』は有名ですね。

19歳で国費留学生としてドイツに滞在したエリートの豊太郎と、彼がドイツで出会った踊り子エリスの恋模様を描いた短編小説です。

豊太郎のエリスへの恋は感情を重視するロマン主義的な作品となっています。

反自然主義(余裕派・高踏派、耽美派、白樺派)

夏目漱石などは、自然主義を批判しました。

彼らは、反自然主義と呼ばれます。

反自然主義は3つの潮流があります。

反自然主義自然主義に反発して誕生。

高踏派余裕派 … 時代にとらわれず理知的立場で表現

 ①夏目漱石:『吾輩は猫である

 ②森鷗外:『雁』『阿部一族』

耽美派 … 官能的な美の追及を第一義とする。芸術至上主義

 ①永井荷風:『あめりか物語』『腕くらべ』

 ②谷崎潤一郎:『痴人の愛

白樺派 … 人道主義・理想主義を追求し、個性の尊重や自我の確立をうたう

 ① 武者小路実篤 

 ② 有島武郎  :『カインの末裔』『或る女

 ③ 志賀直哉  :『暗夜行路

時流から一歩引いて理性的に眺める立場をとった人々は、反自然主義の中でも余裕派、高踏派といわれました。

代表的な人物は夏目漱石森鷗外です。

夏目漱石の『吾輩は猫である』などを見ていただくとわかるのですが、

猫の目線から現実(人の心情)を理性的に描いている様子がうかがえます。

このように、少し遠い場所から俯瞰的に、そして理性的に現実を眺めて人間心理を描き出したのが高踏派です。

高踏派はあくまでもリアルさの追求をするものなので、こちらも写実主義的な系統に属すると言えます。

白樺派は「自由・民主主義を背景に、人間の信頼する個人主義とキリスト教人道主義を基調とする文学」を描きました。

特徴はその華々しさにあったといえます。

出身がエリートの人(華族出身)が多いのも関係しています。

いわゆる「正義が善」のような当たり前のことを描き出したお坊ちゃんグループです。

反自然主義の3つのグループの中で非写実主義の系統を描いたのが耽美派です。

ひたすら「美」を追求し、官能的な表現が多く取り入れた小説を描きました。

完全に内面を重視していますね。

代表的な人物は谷崎潤一郎です。

彼の小説を見ていただければわかりますが、とてもエロい内容となっています。

ただ、下品かというとそうではなく、高尚なものに仕上がっているのが特徴的です。

人が抱く性欲はもっと高尚なものである、という官能的な美を追求した小説が耽美派の特徴です。

プロレタリア文学

最後に、大正時代に拡大した貧富の差を見事に描き出したのがプロレタリア文学です。

プロレタリア文学…無産階級解放のための文学運動として誕生。『種蒔く人』などの機関紙がある

 ①徳永すなお  :『太陽のない街

 ②小林多喜二:『蟹工船』『党生活者』

プロレタリア文学の特徴は、産業革命以降に広がった貧富の格差の中で苦しい思いをする労働者に焦点が当たっていることです。

彼らはとても虐げられていました。

労働者の厳しい現実を描くものとしては小林多喜二『蟹工船』が有名かと思います。

大正時代に生まれたプロレタリア文学ですが、労働者のリアルを描いている、ということはこちらも写実主義的な系統といえますね。

最後にまとめてみます。

まとめ

まとめると以下のようになります。

写実主義現実をありのままに写し出す考え方

自然主義…現実を赤裸々に描く。特に人の醜さを描くことが多い。(田山花袋,国木田独歩,島崎藤村など)

反自然主義(余裕派、高踏派など)…時流から一歩引いて理性的に眺める立場。(夏目漱石,森鷗外など)

白樺派…自由・民主主義を背景に、人間の信頼する個人主義とキリスト教人道主義を基調とする文学の潮流。雑誌『白樺』により活動した。(武者小路実篤、志賀直哉、有島武郎、柳宗悦)

プロレタリア文学…虐げられた労働者の厳しい現実を描く。(小林多喜二『蟹工船』)

非写実主義(内面重視の写実主義)理想を追求する、フィクションもある

ロマン(浪漫)主義…明治20年代、自我意識にめざめ、開放的な自由を求めた文学の潮流。封建道徳からの人間性の解放や、近代的自我の確立を目指した。(北村透谷,与謝野晶子,島崎藤村など)

耽美派…「美」を追求、官能的な表現が多い。(谷崎潤一郎など)

いかがでしょうか。

実は、写実主義的な系統と非写実主義(あるいは内面重視の写実主義)的な系統にまとめると、近代以降の文学界の系統はとても見やすくなります。

とても分類が多すぎて分かりにくい分野ではありますが、2つに分類できるとより理解しやすくなるかと思います。

ぜひ、参考にしてみてください。

以上、近代日本の文学界の系譜(簡単まとめ)でした!

ここまでご覧いただき誠にありがとうございました。

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