本日は、江戸時代後期に活躍した思想家であり、実践家であった二宮尊徳の思想について解説します。
彼が提唱した報徳思想 は、今の時代に求められている「持続可能な社会」や「地域貢献」といった考え方の、いわば「元祖」のようなもので、
現代社会においてもその普遍的価値が再評価されております。
そんな人物を分かりやすくご紹介します。
二宮尊徳って、どんな人?
まずは、二宮尊徳がどんな人生を送ったのか、簡単に見ていきましょう。
二宮尊徳は、今から200年以上前の江戸時代後期に、現在の神奈川県小田原市で農家の長男として生まれました。
幼い頃に両親を亡くし、苦労の多い生活を送ります。
しかし、彼は決してくじけませんでした。
昼間は田畑で働き、夜はわずかな明かりで読書に励む。
そんな努力家だった尊徳は、やがてその勤勉さと知識、そして何よりも人としての信頼を積み重ねていきます。
そして、荒れ果てた農村を立て直したり、困窮した藩の財政を立て直したりと、数々の「不可能を可能にする」偉業を成し遂げました。
彼はただの知識人ではありませんでした。
自らが泥だらけになって働き、実践することで人々に範を示し、その行動で多くの人々を救った「実践の人」なのです。
ストリートアカデミーとは?
ストリートアカデミーでは、大人の学びなおし、子どもの学習のために様々な講座をお手頃価格で受けられます。
「もっと歴史や哲学のことを知りたい」や「茶道や陶芸など新しい経験をしたい」という人たちにぴったりの講座がたくさんあります。
様々な体験をして、新しい自分になるための一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?

報徳思想って、結局何がすごいの?
二宮尊徳の教えの根幹にあるのが、報徳思想 です。
この言葉だけ聞くと難しそうですが、簡単に言えば「世の中の恵みに感謝し、その恵みを自分だけでなく、みんなのために活かしていこう」という考え方です。
報徳思想には、主に以下の4つの柱があります。
- 至誠(しせい):真心で物事に取り組むこと
- 勤労(きんろう):まじめに働くこと
- 分度(ぶんど):身の丈に合った暮らしをすること
- 推譲(すいじょう):余ったものを他人に譲り、社会に還元すること
一つずつ、具体的に見ていきましょう。
1. 至誠(しせい):何事も「本気」で取り組む!
「至誠」とは、どんなことにも真心を持って、真剣に取り組む という意味です。
勉強、仕事、子育て、家事など… 日々色々なことに取り組んでいますよね。
「どうせやっても意味ないし」「めんどくさいな」と思って適当にやるのと、
「絶対に良い結果を出すぞ!」「みんなで成功させよう!」と本気で取り組むのとでは、結果も、そして何より得られる経験が大きく変わってきます。
尊徳は、「人間は真心さえあれば、どんな困難にも打ち勝てる」と考えていました。
表面的なごまかしや、ずる賢さは、一時的には通用しても、結局は破綻する。
本当に人から信頼され、物事を成し遂げるには、嘘偽りのない本気の心が必要だと説いたのです。
これは、友達との関係、家族との関係、そして将来の仕事にも通じる、人間関係の基本中の基本ですよね。
2. 勤労:汗を流して「価値」を生み出す!
「勤労」とは、真面目にコツコツと働く ということです。
尊徳は、何もないところから富を生み出すには、私たちの労働、つまり「勤労」が不可欠だと考えました。
彼自身がそうだったように、朝から晩まで一生懸命働くことで、荒地は豊かな田畑になり、少ない収穫は大きな恵みへと変わっていきます。
今の時代は、体を動かす労働だけでなく、頭を使う労働、クリエイティブな労働など、様々な「働き方」があります。
SNSでの発信も、何かを企画することも、ボランティア活動も、全て「勤労」と言えるかもしれません。
大切なのは、「自分の力を出し惜しみせず、何かを生み出すために努力する」 という姿勢です。
そして、その努力が、自分自身や周りの人々を豊かにしていく原動力になるのです。
3. 分度(ぶんど):自分を知り、「身の丈」で豊かに生きる!
「分度」とは、自分の収入や立場に応じて、無理のない範囲で生活する という考え方です。
今の世の中は、欲しいものが次から次へと出てくる時代です。
新しいスマホ、流行の服、友達が持っているもの… つい「あれもこれも欲しい!」と思ってしまいます。
でも、際限なく欲しいものを追い求めてしまうと、借金をしてしまったり、心が満たされないままになってしまうこともあります。
尊徳は、「自分に与えられた分(分度)を知り、その中で最大限に工夫して生活することで、心の安定と真の豊かさを手に入れられる」と説きました。
これは「我慢しろ」という話ではありません。
自分が使えるお金や時間を把握し、その中で何に価値を見出し、どう使うかを考えることで、より満足度の高い暮らしを送れる、ということです。
無駄遣いをなくし、本当に大切なものにお金や時間を使うことで、心は満たされ、将来のための蓄えも増えていく。
これはいまにも通ずるすごく賢い生き方です。
4. 推譲(すいじょう):余った恵みを「おすそ分け」する心!
そして、報徳思想の最も特徴的な考え方が 「推譲」 です。
「推譲」とは、自分が得た利益や余剰を、自分だけで独り占めせず、社会や他人のために分け与える ということです。
尊徳は、どんなに努力しても、それは自然の恵みや、周りの人々の支えがあってこそ成り立っていると考えました。
だからこそ、自分が得た利益の一部を、困っている人や、将来のために投資することの重要性を説いたのです。
例えば、地域のお祭りに協力する、困っている友達を助ける、ボランティア活動に参加する… これらも全て「推譲」の精神に通じる行動です。
「推譲」は、単なる慈善事業ではありません。自分が与えることで、それが巡り巡って社会全体を豊かにし、結果的に自分自身にも良い形で返ってくる、という考え方です。まるで、種を蒔けば、やがて芽が出て実を結び、それがまた次の種になるように、恩恵が循環していくイメージです。
今の時代で言えば、SDGs(持続可能な開発目標) の考え方に非常に近いですよね。地球環境や貧困問題、格差の是正など、自分たちの利益だけでなく、地球全体、人類全体の未来を見据えて行動することの大切さを、二宮尊徳は何百年も前から説いていたのです。
高校生の君たちへ:二宮尊徳の教えをどう活かす?
「至誠」「勤労」「分度」「推譲」… これらの言葉は、もしかしたら難しく感じるかもしれません。でも、考えてみてください。
- 何事にも本気で取り組む(至誠) → 部活や勉強で、もっと良い結果を出せるかも!
- 努力して何かを生み出す(勤労) → 自分の得意なことを見つけ、磨くことで、将来の選択肢が広がるかも!
- 身の丈に合った暮らしをする(分度) → お金のやりくりが上手になり、無駄遣いが減るかも!
- 周りのためにできることをする(推譲) → 友達や地域とのつながりが深まり、困った時に助け合える関係が築けるかも!
二宮尊徳の教えは、決して「頑張りなさい」「我慢しなさい」という精神論だけではありません。どうすれば自分も周りも、そして社会全体も幸せになれるのか、そのための具体的な行動指針を示してくれたのです。
まとめ:今にも通ずる「報徳のこころ」
二宮尊徳の報徳思想は、遠い昔の物語ではありません。
むしろ、情報過多で移り変わりの激しい現代社会だからこそ、その価値が再認識されています。
「自分だけが良ければいい」という考え方では、やがて行き詰まってしまいます。
これからの時代を生きるには、自分自身の幸せを追求しながらも、社会全体、地球全体の未来を考え、行動できる力 が求められています。
二宮尊徳の「報徳の教え」は、そのための羅針盤になると思います。
日々の小さな努力を積み重ね(勤労)、真心を持って(至誠)、自分のできる範囲で(分度)、そして周りの人や社会に「おすそ分け」する気持ち(推譲)を忘れずに。
そうすれば、未来はきっと、豊かで、意味のあるものになると思います。
ここまでご覧いただき誠にありがとうございました。
コメント